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1−10 『悟り』

理性:では、煩悩を完全になくすることが悟りなのですね。


本能:いえ、決してそうではありません。これが良く誤解されるところ

  なのです。

   煩悩は誰にでもあることなのです。本能に発したことだからです。

  より良く生きる為には本能も含めて、煩悩とは何かを良く知ること

  です。

   理性が本能を活かすものであるように、本能の機能やその限界を

  知って、理性でそれを補完することがより良く生きることに繋がる

  のです。


   悟りというのは、煩悩を煩悩として知り尽くすということでもあ

  るのです。「愚を愚と知るを、賢というなり」という仏教者の言葉

  があります。

   また「煩悩即菩提」という言葉があります。これは相対を離れる

  ことを意味するものです。煩悩に対するものが菩提(悟り)です。

  どちらも別のものではないと知ること、を教えているのです。

   これまで述べてきた本能と理性も、まったくこれと同じことです。

  煩悩が花開いたものが菩提であり、本能を土台にして築き上げられ

  たものが理性なのです。ですから、煩悩も本能も無くしてしまえば、

  菩提も理性も成り立たなくなってしまいます。


   要するに、反する一方に固執し、一方を無視することは悟りどこ

  ろか、より迷いの世界に入ってしまうということです。

  「依ってくるところの真実」を明らかに見ることが、即ち「菩提

  (悟り)」だということになります。依ってくるところの真実とは、

  すべてが相依って成り立つという世界のあり方、それが「縁起」の

  法であり、「空」の真理であるということになります。


   われわれのこの相対(反する二辺)する世界にあって、相対を離

  れるという実践、つまり好悪の念に捉われず、何ものにも執着しな

  い生き方が悟りへの道となるのです。

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